ESCとは、Electronic Speed Controllerの略で、モーターの回転数を制御し、スピードをコントロールするための装置です。
ドローンにおいては、バッテリーから供給される電力をモーターに正確に伝達することで、飛行中のパワー制御を実現します。
ESCはドローンの安定性や飛行性能に大きく影響を与える部品ですが、具体的にどういった機能を果たしているよくわからない、そして、何を基準に選べばよいかわからないという方は多いと思います。
そこで、今回は、ESCの主な機能と製品仕様の見方について、そして、最後にESCを購入する際に注意したいポイントについて、解説していきたいと思います。
主な機能
モーターの制御
モーターをドライブするための回路を搭載しており、高速かつ正確にモーターの回転数を制御します。
カットオフ
バッテリー容量がゼロにると、バッテリーに重大なダメージを与えてしまうことがあり、バッテリー電圧が低下した場合には、ESCは自動的にシャットダウンしてバッテリーを保護します。
また、モーターに過大な負荷がかかった場合には、ESCは自動的にシャットダウンしてモーターを保護します。
スタートパワー
モーターをゆっくりと立ち上げるための機能。モーターをゆっくりと立ち上げることで、モータへの負荷軽減、ドローンの制御性の向上、モーターのパフォーマンスの最適化を実現しています。
ガバナー
操縦者が指示した高度を維持するために、モーターの回転数を一定に保たせるよう流す電流を自動調整します。
BEC
BECとは「Battery Eliminator Circuit」の略で、バッテリーからの電力を他の部品へ供給するための機能です。この機能があると、部品ごとにバッテリーを積む必要がなくなり、回路もシンプルになります。
アクセラレーション
操縦者がスロットルを操作した際に、モーターがどのように応答するかを調整する機能です。アクセラレーションが高い場合、スロットル操作に対してモーターが迅速かつ敏感に反応し、素早い加速を実現します。一方、アクセラレーションが低い場合は、スロットル操作に対してモーターの回転数がゆっくりと変化し、滑らかな加速を実現します。
クーリング
ESCが適切な温度範囲内で運転されるようにするための機能です。ESCは電力を制御する重要なコンポーネントであり、高電流を扱うために発熱します。過熱したESCは性能の低下や故障の原因となるため、適切な冷却が必要となります。
製品仕様の見方
ESCの製品仕様には専門用語が多用されており、何を表しているのかわからないということがあると思います。
そこで、下記、Foxeerの製品を例として、主要な項目について、各仕様を解説してみたいと思いますので、購入の際の参考にしていただければと思います。
Foxeer Reaper F4 Mini 128K 45A BL32 4in1 ESC 20*20mm M3
電流量
Continuous /Burst Current | 45A*4 / 65A*4 |
「Continuous Current」とは、ESCが常に供給できる最大電流の容量で、連続的に供給できる電流量を指します。
「Burst Current」とは、ESCが一時的に供給できる最大電流の容量で、短時間であれば供給できますが、長時間にわたる使用では過熱し、損傷を受けることがあります。
電流量が不十分なESCを使用すると、モーターが十分な性能を発揮できないことがあります。また、ESCに許容値を超える電流が流れることで、ESCが破損する恐れもあります。
入力電圧
Input Voltage | DC 10V~26.2V (3-6S Lipo) |
ESCに電力を供給するための電圧のことで、バッテリーからの電圧に対応可能な入力電圧範囲が指定されています。入力電圧範囲外の電圧を供給した場合、ESCが故障する可能性があります。
BEC(Battery Eliminator Circuit)
BEC | NO |
BEC機能の有無。BECとは、バッテリーからの電力を他の部品へ供給するための機能です。ESCにBEC機能がない場合でも、FCにあれば問題ありません。
テレメトリー
Telemetry | Supported |
Telemetry機能とは、ESCからのデータや情報を送信し、リアルタイムで監視や制御するための機能です。ESCはモーターの回転速度や電流、電圧などの情報を取得し、これらのデータをテレメトリー機能を通じて送信します。
ESCのテレメトリー機能を利用することで、ドローンの飛行中にモーターのパフォーマンスやバッテリーの状態などの情報をリアルタイムで監視することができます。これにより、モーターの異常やバッテリーの過熱などの問題を早期に検知し、適切な対策を取ることができます。
ESCのテレメトリー機能は、通常は専用の受信機やフライトコントローラー(FC)と接続されます。受信機やFCはESCから送信されたデータを解釈し、ドローンのパフォーマンスや状態を表示したり、制御アルゴリズムに反映させたりすることができます。
ファームウェア
ESC Programming | BLHeli32 |
ESCのファームウェアのこと。
代表的なオープンソースのESCファームウェアとしては、BLHeliというものがあります。BLHeliは、ユーザーが独自の設定を行いやすいように設計されており、多くのESCメーカーがBLHeliを採用しています。また、BLHeli_Sというファームウェアもあり、これは小型のESC向けに最適化されています。BLHeli32は、BLHeli_Sよりも新しいバージョンであり、32ビットプロセッサを使用しているため、処理能力が高くなっています。
入力信号
Input Signal | DShot 150/ 300/ 600/ 1200 /MultiShot/ OneShot etc. |
フライトコントローラーからESCに伝える信号のプロトコル。FCからの指示により、ESCがモーターの回転量の制御を行います。
プロトコルには、以下のようなものがあります。
OneShot: パルス幅変調 (PWM) を使用する最も古いプロトコルで、制御信号が比較的遅いため、モーターの反応速度が遅く、モーターのパフォーマンスが低下する可能性があります。
MultiShot: OneShot より高速で正確な信号処理が可能で、スムーズで正確なモーター制御が可能です。
DShot: デジタル信号を使用するプロトコルで、非常に高速で正確なモーター制御が可能です。DShot はまた、信号の劣化を防ぐために誤り訂正を実行するため、信頼性が高く、反応速度が非常に高いです。DShot 150、300、600などの数字は、データの送信速度(ビット/秒)を表します。より高い数字のDShotバージョンでは、より高速なデータ送信が可能になり、より滑らかで正確なモーター制御が可能になります。
ProShot: DShot の改良版で、より高速で正確なモーター制御が可能です。DShot と同様に、ProShot は信号の劣化を防ぐために誤り訂正を実行するため、信頼性が高く、反応速度が非常に高いです。ProShot は DShot に比べて信号の安定性が向上しており、より長いケーブルを使用できるため、ビデオ送信機やレシーバーなどの他の電子機器からの信号干渉の影響を受けにくくなっています。
取り付け穴
Mounting Hole | 20×20mm, Φ4mm/ M3 |
ESCを取り付けるための穴の位置やサイズのことです。ESCはドローンのフレームに取り付けられますが、ESCには普通、穴が開いていて、そこにビスやネジを使って固定することができます。Mounting Holeのサイズや位置は、ドローンのフレームによって異なりますので、ESCを選ぶ際には、フレームとの相性を確認する必要があります。
20×20mmは、ESCの基板にある4つのあなの位置が20mm×20mmのサイズであることを示しています。Φ4mm / M3は、マウント穴のサイズを示しており、4mmの直径でM3サイズのねじを使用することを意味しています。
サイズ
Dimension | 40.5×33×5.5mm |
ESC基板の縦、横、高さを表します。こちらもフレームとの相性を確認する必要があります。

ESC購入時の注意ポイント
- ESCの最大電流量が、モーターの最大電流量以上となっているか?
- 入力電圧が、使用するバッテリーの電圧範囲内か?
- フレームに取り付け可能か?(ESCのサイズ、ねじ穴のサイズや位置)
- BECの有無。(Fright ControllerにBEC機能があれば、ESCになくてもOK)